★国益害する迷走目に余る 野党の責任

安倍晋三首相の靖国神社参拝や歴史認識を「東アジアの不安定要因となる司能性」と批判したと聞き、中国や韓国の要人発言だと思った人もいたのではないか。

民主党の海江田万里代表が、訪米中にワシントンで行った講演での言葉である。政権批判や論争は国内で存分にやれぱよい。野党第一党の党首が海外で発言する際に、おのずとわきまえるべき一線はあるはずだ。

タイミングも最悪だ。折から中国を訪間したへーゲル米国防長官は、力で尖閣諸島の奪取などを狙う中国の対応は容認できないと激しくやりあっていた。外交は国益のためのもので、党益のためであってはならない。

野党党首が今なすべきことは、外国での「告け口」ではない。与党と政策を競い合える態勢への立て直しこそ急務だ。

安倍政権が取り組む集団的自衛権の行使容認問題についても海江田氏は講演で、憲法解釈変更という方法に否定的な見解を示した。ところが、海江田氏と別に訪米した民主党の長島昭久元防衛副大臣は、行使容認には「党派を超えた支持がある」という考えを米議会関係者に伝えたという。

党内の意見がこれだけかけ離れている状況を放置したまま、なぜ海江田氏は海外で慎重論を述べることができるのか。申国の挑発や軍拡にどう対処していくかの具体策も論じられていない。

他の野党の迷走も目に余る。日本維新の会は、共同代表の橋下徹大阪市長が大阪都構想をめぐる出直し市長選で当選したが、最低の投票率という形で政治手法が批判を受けたといえる。野党再編の一環として結いの党との統一会派結成などを模索しているが、「護憲政党と一緒になるのか」といった党内の反対意見を残したまま、大胆な政策を打ち出せる勢力になるとは考えにくい。

みんなの党は、8億円借り入れ問題で辞任した渡辺喜美前代表の後任に浅尾慶一郎幹事長が就く方向だ。集団的自衛権の行使容認などをめぐり、安全保障政策では現実路線をとることを期待するが、当面は党勢の維持に追われることになるだろう。

政権を争う健全な野党勢力の存在は民主主義に不可欠で、現政権に緊張感を持たせるためにも必要だ。役割を果たせていない現状を野党はもっと直視してほしい。