第28回土光杯全日本青年弁論大会 情報源:産経新聞H24.1.26

 

私の実家は自動車部品を加工する中小製造業を営んでいる。仕事も忙しく、活気もあったが、生産拠点のシフト、新興国の台頭、そしてリーマン・ショツクなど世界経済の激変後、追い討ちをかけるように東日本大震災が発生し、暗い話題が多くなった。

かつて「低賃金国で、安くて、品質の良い製品作り」が日本型成長モデルだった。それは現在、中国・韓国・東南アジア諸国に移っており、モノ作り日本は厳しい現実にある。しかし、日本の競争力は、いまも世界最高水準で、競争力を十分に発揮できる。

海外の人は日本の良さをよく知っており、日本では当たり前の技術であっても多くの国々で必要とされている。TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の論議においても日本の農作物のおいしさ、安全性に対する信頼性はずっと高いようだ。管理技術・経験・勤勉さなどの優位性もあり、同じ土俵なら我々日本人は負けないはずである。

海外の優秀な人材を活用し現地の二ーズに合わせた市場の開発が日本再生の鍵となるはずだ。海外にその可能性を見い出し、政府を巻き込んでの議論となるよう活動していくことは大切だと思う。

日本再生のもう一つの鍵が「真心」だ。現在、私は福祉工学を学んでいるが、クオリティー・オブ・ライフ(生活の質)の向上こそ福祉工学の本来の役割だと思っている。この分野は障害の内容や二ーズがさまざまなため、主に中小企業が取り組んでいたが、超高齢化社会を迎え、大手企業も福祉産業に力を入れ始めている。

「モノ作り日本」の新たな基幹産業として世界市場を狙うことができ、低迷する日本経済に大きく貢献できるはずである。膨大な開発費や法律・制度の整備など多くの課題もある。しかし、一緒に「痛みを知る」「感じる」といった患者さんや介護者本位の機器の開発は不可欠であり、そうした「関わり合い方」が大切である。人間尊重の福祉機器の開発者に私はなりたい。

「日本のモノ作りの伝統」は、「真心をこめ相手の立場に立ったモノ作り」である。たとえ市場が変わり、人材や仕組みが国際化しても、その精神は決して変えてはならない。私の考える日本再生の鍵は、「この不変の伝統的精神をもって、海外に目を向け挑戦し続ける!」こと。農業なども含めた日本のモノ作り、日本人の役割はいまこそ求められているのである。