中国政府対日訴訟を支持 「強制連行問題解決促す

【北京=矢板明夫】第二次大戦中に日本へ「強制連行」され、日本国内の炭鉱などで働かされたとして、中国人元労働者や遺族らが26日、日本企業を相手取り、損害賠償と謝罪を求める訴状を北京市第1中級人民法院(地裁)に提出した。

訴状が正式に受理されれば、日本の戦時「強制連行」をめぐる中国国内で初の訴訟となる。日中関係への影響は必至だが、中国外務省の華春螢報道官は同日、「強制連行は日本軍国主義が犯した重い罪で、まだ解決されていない歴史間題だ。責任ある態度で問題を解決するよう日本側に促す」と提訴を支持する考えを示した。

原告団は計37人。訴えられたのは、三菱マテリアル(旧三菱鉱業)と日本コークスエ業(旧三井鉱山)で、2社に対して1人当たり100万元(約1700万円)の賠償のほか、日中両国の主要メディアに謝罪広告を掲載するよう求めている。原告代理人の康健弁護士は、「2社に連行された被害者は計9415人」と主張。法律的には被害者全員の参加が可能だとの見解を示しており、原告団が拡大する可能性がある。

北京での提訴に続き、今後は河北、山東各省など戦時中、日本の勢力圏にあった地方でも同様の訴訟が起こされる見通しだ。被告となる日本企業も30社以上に膨らむとみられる。「強制連行」問題で、これまで中国国内の裁判所に提出された訴状が受理されたことはない。仮に今回受理されれば、外交レベルで「解決済み」とされてきた戦争賠償の請求間題を「民間賠償」として蒸し返す形となり、中国の方針転換を示すものとなる。

受理の可否は形式上、裁判所が判断するが、中国の司法は中国共産党の指導下にある。中国の法曹関係者の間では、最近の日中関係の悪化などを受け、訴状は受理される可能性が高いとの見方が支配的だ。一方、一旦受理されれば、日本企業を訴えるケースが全国で相次ぎ、日本企業の対中投資や日中貿易などに大きな影響が出る恐れがある。習近平指導部は中国経済への影響と国内外の反応を見ながら慎重に判断するとみられる。H2面に「主張」