"武力も辞さず"・・・中国共産党
中国「領土問題認めよ」 尖閣、関係回復へ条件


【北京"矢板明夫】中国外務省の洪嘉報道官は28日の定例会見で、「釣魚島(尖閣諸島の中国語名)間題について中国の立場は一貫している。われわれは日本に対し、早く(領土間題に関する)争議があることを認め、対話を通じて釣魚島に関する間題を解決するよう求める」と語った。

日本政府が「尖閣諸島に領土間題は存在しない」という公式見解を放棄すれば、中国は関係回復に向けた交渉を始める用意があるとの姿勢を中国政府当局者として初めて示した。

今月11日の日本政府による尖閣国有化を受け、中国当局は、日本との経済・文化交流イベントの中止や日本製品不買運動の容認などの対抗措置を取ってきた。その後の日中間の政府関係者の会談でも日本の対応を厳しく批判したが、交渉条件には触れていなかった。

しかしこの発言で中国の狙いが、尖閣諸島の領土問題の存在を日本政府に承認させることにあるのが見えてきた。中国公船による尖閣周辺の巡回が半ば常態化するなか、
日本が領土問題の存在を認めれば、尖閣諸島を中国と日本が共同支配している印象を国際社会に与えることができ、尖閣奪取への大きな一歩となるようだ。

 

日本側の挑発が原因
中国共産党の機関紙、人民日報傘下の環球時報は17日、「保釣(釣魚島の主権を守る)運動の輪を全世界に広けよう」と題する寄稿記事を掲載し、世界各国に居住する華僑や中国人を動員して、各地の日本の大使館、総領事館に抗議することなどを呼びかけた。筆者が中央政府官庁である商務省研究院の唐淳風氏であるため、中国当局の考えを反映した可能性もある。

環球時報(中国)
唐氏は記事の冒頭で、尖閣問題で自衛隊出動の可能性に言及した野田佳彦首相を批判した。「外交交渉問題を武力抗争に昇格させたいと日本が考えるならば、中国はいつでも受けて立つ」と強気な姿勢を示す一方で、「日本との軍事対抗は目的ではなく、いかに釣魚島の主権を早く取り戻すかが重要だ」と読者に冷静な対応を呼ぴかけた。

尖閣諸島を「戦争によって日本に奪われた中国の領土」と定義し、同諸島に対する日本の実効支配は「違法」と決めつける。

これまでに中国や香港などで起きた「保釣運動」の盛り上がりは、ほとんどが日本側の挑発を受けたものとの見方を示したうえで、尖閣を取り戻すためには、過去の「保釣運動」の方法を見直す必要があると強調した。

その具体策としては@第二次世界大戦で、日本から侵略を受けた韓国や東南アジアなどの被害国に呼ぴかけ、領土問題でともに日本への批判を強めるA欧米諸国のメディアに寄稿記事や広告を掲載してもらい、中国の尖閣での主権をアピールするB世界中の華僑や中国人を総動員して、各地の日本の在外公館に抗議するーなどだ。

記事は「保釣運動の輪を世界中に広げることは、一連の日本の挑発行為に対する最高の反撃になるだろう」と結論づけるなど、攻撃的なトーンに終始した。
(北京矢板明夫)

日米同盟第3次「アーミテージ報告書」米軍と自衛隊 相互運用能力高めよ
【ワシントン=佐々木類】アーミテージ元米国務副長官ら超党派の外交・安全保障専門家グループは15日、日米同盟に関する新たな報告書を発表した。中国の台頭などをふまえ、日本は一流国家であり続けたいのか、二流国家で満足するのか、「重大な転機」にあると評した。また、自衛隊による将来の集団的自衛権行使容認を念頭に、米軍との共同対処を含めた日本の新たな役割の検討と任務の見直しを求めている。

今回の報告は、2000年と07年に続く第3弾。来年1月に発足する米新政権が民主、共和両党のどちらになろうと、日米同盟に関する一貫した政策の遂行を求める目的でまとめられた。

報告は序論で、日米両国は、中国の台頭と、そのパートナーで核武装した北朝鮮の脅威に直面しているとの認識を表明した。また、日韓の緊張緩和のために米国として外交努力をすべきだとした上で、日本に対しても韓国との歴史問題に向き合うよう求めるなど、日米韓の関係強化が不可欠だとしている。

「新たな同盟戦略」という項目では、日本列島と台湾、フィリピンを結ぶ第1列島線を越え、米空母打撃群の「接近阻止・領域拒否米軍と自衛隊相互運用能力高めよ(A2AD)」戦略を進める中国海軍に対し、米軍の「統合エアシーバトル(空海戦闘、ASB)」と自衛隊の「動的防衛力」構想で対抗すべきだとした。

・特に日本は、近隣諸国から差し迫った脅威を受けており、尖閣諸島を事実上の「核心的利益」と位置付け、海罵を増強している中国軍との偶発的な衝突に備え、米軍と自衛隊の相互運用能力を高めるべきだと強調した、また、原油の多くを中東に依存する日本はアラビア海の海賊対策を続け、シーレーン防衛と南シナ海での航行の自由の確保を目指すべきだと強調した。

東日本大震災後の"トモダチ作戦"では共同作戦が奏功したが、日本は依然として有事に集団的自衛権を行使できず、共同対処の大きな障害となっているとした。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設間題では、時間と政治エネルギーを浪費したと指摘。過去にとらわれず、将来の安全保障を考えることで打開策を見つけるべきだとした。

報告には、アーミテージ氏やナイ元国防次官補、グリーン元国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長らが参加した。(8面に関連記事)