尖閣国有化あす二年
中国公船減も漁船急増
専門家「実効支配確立へ危険な兆候」

 日本政府による尖閣諸島(沖縄県石垣市)国有化から11日で丸2年。周辺海域では今なお中国公船と海上保安庁の巡視船とのにらみ合いが続くが、昨年秋頃から中国公船による領海侵入はぺースダウンする一方、中国漁船による領海内での違法操業が急増している。専門家からは中国側の攻勢がより巧妙化しているとの見方が示され、海保も警備態勢強化を急いでいる。

 海保によると、9日も接続水域内(領海の外側約22キロ)を中国海警局の船4隻が航行しており、32日連続の確認となった。平成24年9月の尖閣諸島国有化以降、中国公船による接続水域内での航行は9日現在、計494日で、うち領海侵入は計95日に上る。

 国有化1年目と2年目の平均の接続水域航行日数はほぼ横ばいだが、領海侵入については月平均約5日だった1年目に対し、それ以降は約2.8日と減少傾向を示す。一方、新たに懸念されているのは領海内での中国漁船による違法操業の急増だ。海保が退去を警告した隻数は24年に39隻、25年に88隻だったが、26年は9月9日現在ですでに207隻に及んでいる。

 こうした動きの背景には、中国側のどんな思惑があるのか。中国公船による領海侵入が減っている現状について、防衛大の村井友秀教授(国際関係)は日中首脳会談の実現などを模索する動きが水面下で続く状況を踏まえ、「対立レベルをクールダウンさせているのではないか」と指摘。

 ただ、今後も侵入が減るかは「フィフティー・フィフティー」と慎重な見方を示す。「侵入が減ったのは日本側の領海警備が厳しくなったからだろう」と話すのは東海大の山田吉彦教授(海洋政策)。「接続水域であろうが領海であろうが、公船を尖閣周辺に出している事実に変わりはない」とし、中国側の基本路線に変更はないとみる。

 さらに中国漁船の領海内での違法操業の増加については「より危険な兆候」とみる。「中国は自国民の保護を口実に進出し、実効支配態勢の確立を狙っている」とし、攻勢がより巧妙化していると分析する。

 海保もこうした状況を踏まえ、領海警備強化に向け、平成27年度予算の概算要求で巡視船やジェット機の新造費用などの関係予算としては26年度当初の約2
倍に当たる約504億を計上している。海保の佐藤雄二長官は9日の定例会見で「毅然(ぎぜん)かつ冷静に対応し、断固として守り抜く」と述べ、引き続き尖閣周辺での領海警備に注力する方針を改めて示した。